世界中の様々な伝承や物語の中で、狼は損な役を与えられていることが多く、例えば有名な童話「赤頭巾ちゃん」「七匹の子ヤギと狼」、最近では「ナルニア国物語」など、いずれも狼はひどい悪役として登場しています。特にヨーロッパでは昔から狼は人を喰うもの・恐ろしいものという概念が強いようで、今日でも質問してみると狼は悪獣だと答える人が多いといいます。だがこれらはどこまでが根拠のある話なのでしょうか?カナダ政府が狼の人間に対する加害例を調査したところ、狼が人を襲って殺し、喰ったという例は皆無でした。またロシアでの調査でも同様でここ200年間の資料ではそのような例はなかったのです。

しかし人食い虎や人食い熊が例外的に現れているように、人食い狼なるものがたまに出現したとしても不思議ではありません。1764年にフランスのジェボーダン地方に現れ、村人多数を殺害した巨大狼の話は有名で、映画「ジェボーダンの獣」のモデルにもなりました。ベートと呼ばれたこの狼のためにルイ15世は軍隊を出動させたり、全国から4万名の猟師を動員し1万フランの賞金を賭けたりしましたが、それでもベートはつかまらず、住民を恐怖のどん底に叩き込んでいました。しかしついにアントワンヌ・ボワールという猟師がしとめたとあります。この話はいくらか誇張はあるにしろ詳細に記録されているので史実だと思いますが、世界史のなかでも極めて特異なものです。狼に対する偏見の一因は、それらの例外的なエピソードが訓話などとして子供たちに語られ、純真な頭に狼は悪者という概念を刷り込んでいるという面もあるのではないでしょうか。

狼は人を喰うのか?