発砲スチロール用ナイフ

我々造形屋は発砲スチロールで造形物の原型を作ることが多いです。スチロールを削っていくときカッターナイフなどでは大きさも強度も足りないので自作のナイフを製作します。これには大きく分けて市販の包丁を加工する人と,、のこぎりの刃を加工する人がいるようです。私はのこぎり派です。スチロール造形では少しづつ削いで形を決めていくので、しなる刃が使いやすいからです。カッターナイフを使った場合もともと刃が折れるよう設計されていろので危険でもあります。
育った環境で包丁のほうが使いやすいという人も多いです。彼らは主に刺身包丁か牛刀を使っています。牛刀はともかく刺身包丁でどうやってスチロールをボリームダウンしていくかというと、突き刺して刀をひねり、えぐりとるという技法を多用しているようです。刃が薄ければ薄いほど小さい力で切れるのでスチロール専用として薄系もあった方が良さそうです。
用途に合わせていろいろな種類のものを作っています。試作実験品もあります。やはり大きく・しなる@が最も使用頻度が高いですが、焼きが入っていないので制作中何度も刃を研がねばなりません。Bはハイスピード鋼という金属を切る機械のこぎりの刃を加工しました。焼き入りで強度はあるのですが、どんなに薄くしてもしなりがありません。Aはダマスカス鋼で刃だけ特注で作ってもらいました。私の宝でもあります。ステンレス製なので磨耗しにくく刃研ぎする頻度が少なくてすみます。これらは硬い刃なのではじめの荒削りに使います。ナイフの柄は東急ハンズの端材コーナーで調達しています。

@

A

B

ダマスカス鋼
現在では様々な模様のダマスカスがあります。
もともと10〜18世紀頃までシリアのダマスカスで製造されていた刀剣、鋼材はインドのウーツ産なのでウーツ鋼とも呼ばれています。波型模様は、異種金属が混じった鉄をるつぼの中で溶かし、ゆっくり固まるとき、融点の違う金属がグループの層になり、それぞれ固まっていったことによりできたものです。現在その製法は、失われてしまっており、遺物を研究することで、様々は方法により外観だけを再現しています。現代のダマスカス鋼は複数の金属を重ね合わせて打ち、それを繰り返して作っています。上のナイフはニッケルとの混合ですが、当時これはバナジウムだったといわれています。実際、鋼にバナジウムを0.1%程度混合すると、炭素と結合し、より細かい金属構造になり、粘り強さを失わず強度アップでき、機械的性質や耐熱性なども向上します。当時、科学的知識はなかったはずですが、偶然できた超合金で、さびにくく強度も高いので十字軍の兵士に魔法の剣ともてはやされ、ダマスカス刀剣を身につけることはステータスでした。製法・生産が途絶えた原因はバナジウムを含む鉄鉱石がインドで枯渇したことだったのかもしれません。
今日では科学技術の進歩により多数の鋼材が生み出され、非常に優れた能力を発揮しています。残念ながら現在においてダマスカス鋼の実用的優位性はありません。遥か昔、今のような鋼材ができる以前に、どのようにしたら折れない、さびない、などと言うことを追求した過去の文化なのです。十字軍の兵士たちが敵と切り結んだとき優位に立てたのは、相手の剣がなまくらだったからです。他の鋼材と比べると切れ味はそんなに良くないし、刃持ちも良くない、錆びる、手入れも大変、しかし綺麗で面白い.。ダマスカスナイフは「嗜好品」として、その不思議な模様はどことなく人の心を捉えて離さないのです。